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husky voice

ダチョウと私。

先日のに引き続き、ノートに書き連ねていた文章シリーズを公開。
テーマは「ダチョウ」。

…「牛」といい「ダチョウ」といい。仕方ないよね。そうゆう大学だったんだから。



ダチョウはすごい鳥である。

思いのほか、唐突な出だしで書き出してしまったけれど、ダチョウとは、主にアフリカのサバンナに生息する、雄は高さ2.4m、体重120kgにもなる世界最大の鳥類である。歩くときは時速4kmぐらいであるが、敵が近づくと、なんと時速60km以上の速さで走る。寿命は平均40~50年。2歳から産卵を始め、年間平均40個の卵を産むというのだから、非常に繁殖力の強い鳥と言えるだろう。また、ダチョウの皮は革製品に、静電気をほとんど帯びない羽はOA機器や自動車のダスターとして利用されるとともに、その肉は脂肪、カロリーおよびコレステロールが低いヘルシー食材として近年注目を集めている。と、ここまで読んでみると、ダチョウとは、その大きさや走る速さだけでなく、家畜としても余すところなく活用できる、非常に優れた鳥ということが分かるだろう。ダチョウはすごいのだ。

また、ダチョウと聞くと、多くの人がイメージするのは、動物園で展示されると、たちまち子どもたちが興味深々なまなざしをたたえて群がる人気コーナーになってしまう、その巨大な卵や、かつてポカリスエットのCMでもあったように、人を背中に乗せて軽快に走るその姿だろう。勇ましく、俊敏性に富んだその姿は見るものを魅了する。動物園や企業のマーケティングにも活用されるダチョウ。やはりダチョウはすごいのだ。

でも、どうしたものか。ダチョウと聞くと、私の脳裏に真っ先に浮かぶものは、長い木の棒を頭上高く掲げ、それを上下させながら中腰で進む、自分の姿である。

大学で獣医畜産学部に所属していた私。1年生の春に実習で与えられた課題が「ダチョウの餌やり」だった。大学構内の狭い檻の中で飼育されていたダチョウは、ストレスのためか気性が荒く、学生を認めようものなら、その素晴らしい脚力で突進してくる危険性があった。餌やりという正当な理由があってもおかまいなし。まして私の華の女子大生たる初々しさなんて届くはずもない。そのため、餌を安全に与えるためには、学生だとダチョウに認識させない、イコール、ダチョウになりきる必要があった。

つまり、長い木の棒を頭上高く掲げ、それを上下させながら中腰で進む…それは、ダチョウになりきった私の姿だったのだ。ダチョウになりきり、近づき、サッと餌のバケツを置き、また棒を上下させながら中腰のまま素早くその場を立ち去る。それが、襲われないで課題を達成する唯一の手段だった。

もう一度繰り返そう。ダチョウはすごい鳥である。大きさ、走る速さ、すばらしい。家畜としても、申し分ない。イメージ戦略も、たいしたものだ。ダチョウはすごい。
ただ、ダチョウは私のあの滑稽な姿を仲間と認識した。身をもって体験したこの事実をもって、私は言ってやりたい。


ダチョウは意外とすごくない。

すごいのは私だ。


華の女子大生の心に深い傷を負わせた罪は重い。


おわり。
by azusazusa_62 | 2011-08-03 02:48 | Column